「そんなんじゃクチコミしないよ」(河野武)を読みました。面白かったですね。
難しい言葉を使わず大事な点を付き、理想をきちんともっている。僕の思うネット界にいる人の「理想の立ち方」というものを見たような気がします。(あくまで立ち方が理想的ということであって、意見に全て賛同する、というわけではありません。こういう振る舞い方、態度を取って意見を練り、述べていくのが理想のあり方だ、という意味ですが)。
広告代理店やIT企業の人が売り込みに来る「ブログやネットを利用すればたちまち儲かる」みたいな提案の内容に辟易していましたが、この本を読んですっと鼻が通って呼吸が楽になったような気がします。
これまでどうして僕のところに来るIT企業の営業の人はこうなのか、と不満に思っていました。この本を読む限り、ブログやITをつかったマーケティングの分野に雨後の竹の子のようにいろんな人が算入(殺到)していて、質の低い状態になっている、ということなのでしょう。
巻末に、著者と広告代理店におつとめの人たちとの座談会の模様が収録されています。その中である人が「ブログでランチを食べた店を紹介すると、同僚のブロガーも同じ店に行った」という実例を紹介したところ河野さんはこう答えています。
p.165 その話は実際にブログを書いている本人を知っている同僚同士だから起こるような気もしますね。
そうなんですよ。
ブログ「だから」クチコミが起こったんじゃないんですよね。
単純に同僚同士が作用し合っているだけなんです。それがブログを通したか、携帯電話を通したか、普段の雑談の中で起こったか、ということにすぎない。いくらブログで話題になっていたとしても、本人をリアルな世界で知らないし、書いた本人に親しみももっていないようなそんなブログなら、まだテレビCMの方が影響を受けてしまいます。
こんな風に河野さんは ブログを過大評価もしないし、過小評価もしていません。僕のところに売り込みに来るIT企業の人がやたらとブログやネットの力を持ち上げる態度とはまるで違います。
以前、提案に来た企業の人から、ある有名なブログキャンペーンをしかけたのはうちなんですよ、なんて自慢をされました。業界内では他社に先駆けて担当者ブログを開始し「こんにちは、○○です」という書き出しで始まるというブログが話題になったという事例は、セミナーや雑誌でも取り上げられたので知っていました。
そうなんですか、あなた方が仕掛けたんですか。
「で、話題になったのは知っているんですが、売上はどれくらい伸びたんですか?」
その人、黙ってしまいました。急に、口が重くなり「伸びたと思いますよ」「けっこうすごく」とかIT企業とは思えないほどあいまいで感覚的な表現に。なんだそりゃ。
「書いた人を知っている」という点について、河野さんは、他の箇所でも触れています。
p23-24 ぼくはプライバシーを守ったコミュニケーションを可能にした点で、2チャンネルを評価しています。意見と発信者を分けることによって、普段は言いづらいことが言えるようになる。
p150 発言内容と発言主体ってリアルな世界では必ずセットなんです。…(略)…ブログのクチコミの場合、それがどこまでセットになっているのか疑問なんですよ。
「意見と発信者を分離する」という考え方は、「ファシリテーション」やディベートでも基本となるもので、最近読んだビジネス書や雑誌なんかでもよく出てきます。
アメリカでは、実名を名乗ったブログやSNSがある一方、日本ではそうしたブログはスゴイ有名人やIT界の先駆者を除けばまだまれです。上述のように、2チャンネルのように匿名性を担保されて始めて意見と発言者を分離できた、ということは、こうした(意見と発信者を分離して論理だけで組み立てていく)という態度は、日本人にはまだ、なじみにくいのかもしれません。
「影響力」を残すためには匿名やなりすましではダメ、一方自らを晒してでもだれかに影響を及ぼすような意見を表明するとしたら話題は「ランチレベル」になってしまう」というジレンマ。このあたりにブログを使ったマーケティングのヒントがあるような気がします。
ぼくはこういう知見を、売り込みに来るIT企業の人から聞きたいのです。「ソリューション」だの「コンサルディング」だの言う割には正式な社名も確認してこないようなそんな売り込みはもううんざりなのです。
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